11月 霜月
  紅葉前線が南下し、日ごとに秋の深まりを感じます。季節は秋から冬へ、涼しさから寒さへと向かいます。寒さを表す言葉には「そぞろ寒」「やや寒」「肌寒」「朝寒」「夜寒」などさまざまな言い方があり、私たち日本人の季節感の敏感さを感じさせられます。それぞれの言葉の中に、肌に感じる冷気の感覚の違いを表現しています。現代のように冷暖房に頼ることが少なかった時代には、なおさらだったのでしょう。
 この季節の花、「山茶花(さざんか)」や「柊(ひいらぎ)」は清楚で、どちらかというと華やかさには欠ける印象があります。それだけに、紅葉も終わり、落ち葉の頃になると街や野山の風景にも彩りがなくなり、どことなく寂しさを感じます。
秋深き 隣は何を する人ぞ  芭蕉
 有名なこの句は、こんな季節の寂しさ、人恋しさをくっきりと描いています。人の心は、どうしてこうも季節や天気に左右されるものかと、もどかしく思うこともしばしばですが、そんな気持ちの揺れにもまた、人が自然とともに生きていることを感じさせられます。
 11月8日は立冬。木枯らしが吹き始め、季節は本格的に冬に向かい寒さが厳しくなってきます。そんな中でも、ときおりの小春日和に、近所を散歩したり、昼寝する猫をながめたり…。小さな楽しみを見つけて、心も身体も暖まるひとときを持てたらいいですね。

※松尾芭蕉(まつおばしょう)

 1644(正保元年)〜1694(元禄7年)

人生を旅とし、旅を俳諧にした。漂泊の俳人として後世に名を残す。伊賀国出身。自然や庶民生活の詩情を余韻豊かに表現して、蕉風俳諧を打ち立てた。東北路への旅を始まりに諸国を旅し、九州を目指す旅行中、大坂で死去する。『野ざらし紀行』『奥の細道』などの紀行俳文を残す。
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