9月 長月
 夏の暑さはすっかり遠ざかり、涼風にほっとすることが多くなりますね、とありきたりの言葉をつづりながら、例年にない冷夏だったこの夏、どこか物足りなく夏の暑さを惜しんでいる人も多いのでは…と思ったりしています。少しぼやけた季節の中で、どんなところに秋を見つけましたか?澄みきった空の青さやいわし雲、秋の虫の声、日々早くなる日の入りの時刻…でしょうか。
 「すすき」「秋桜(コスモス)」「吾亦紅・吾木香(われもこう)」「曼珠沙華(まんじゅしゃげ)」
秋を代表するこれらの花は高原などに群生して咲き誇るイメージがあります。ひとつひとつの花の主張よりも風景の中に溶け込んだ花としての印象が強く、豊かな自然に育まれ、包まれた美しさを感じる花々です。
折りとりて はらりとおもき すすきかな 蛇笏 
 はらりと軽そうなすすきの穂を折って手にした時の意外なほどの重み、生き生きとした生命の重みを詠んだ句です。すすきが一面に広がる風景は秋を代表する景色の一つですが、この頃はそんな風景を目にすることも少なくなってしまったようで、少し寂しさを感じます。
 “秋の陽はつるべ落とし”という言葉は秋の夕陽が燃え尽きるようなスピードで落ちていく様子を表現したものですが、夕陽の鮮やかさと夜の闇のコントラストが秋の夕焼けをより美しく見せるのかも知れません。今年の秋は、そんな素敵な夕焼けに出会いたいですね。

※飯田蛇笏(いいだだこつ) 
1885(明治18)〜
1962(昭和37)
山梨県境川村生まれ。早稲田大学在学中に「国民俳壇」「ホトトギス」に投句し虚子に認められる。大学を中退して虚子門下に入り、鬼城、普羅、木巴、石鼎らと『ホトトギス』を盛り上げる。『山盧(さんろ)集』『椿花集』等の句集を出版。

閉じる