3月 弥生
   暦の上ではもう春ですね。風はまだ冷たいですが、風の中に明るさが感じられる季節になってきました。風に揺れる風景や木々の若葉がすべてが光って見えるのは、春の日のやわらかな感触の風が触れながら通り過ぎてゆくためだそうです。
風光る」という季語はそういう春の風景から生まれたのでしょう。心がときめくきれいな響きのある言葉です。
 もうひとつわくわくする季語を見つけました。草木が芽吹き、山桜がチラホラ咲き始め、薄桃色のぼんやりとした彩りを添える今頃の山は、思わず笑いたくなってしまうほど、開放感に満ちた風情があります。凍てつく寒さに耐えてきた山が、自らの豊かさを花開かせる春。この営みを俳人の感性が感じ取り表現した言葉が「山笑う」なのでしょう。(ちなみに冬に入るときは「山眠る」となります)
「故郷やどちらを見ても山笑ふ」 子規
 風が光り、山が笑う季節。人の気持ちもどこかしら明るく輝いてくるのが今の季節なのかも知れません。私たちもこの3月、いろいろな意味で転機が訪れます。卒業、就職など不安や期待が入り混じる今の私たちを優しく包み込んでくれる一句に出会ったような気がします。でも私的には、この花粉症だけは何とかしてほしいものなのですが…。

※正岡子規
(1867-1902)
慶応3年、東京に生まれる。俳人・歌人・随筆家。盲目的な芭蕉追随を排し、明治10年雑誌「ホトトギス」を創刊、近代俳句の文学的価値を高めた。門下に内藤鳴雪、高浜虚子らがいる。

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